日々

生まれ出づる悩み

図書館へ向かう途中、公園脇のゴミ置場に有島武郎の「生まれ出づる悩み」があった。 青空文庫にも蔵書される、古い本だ。今になって棄てられた経緯を妄想する。 先の雨で湿り気を帯びた橙は、より一層深みを増してる。秋はわたしを感傷的にさせる。 有島武郎…

電力を喰らう者物

いつからだろう、為体なわたしは誰かが起こしてくれるまでずっと寝ている。 平日はアラームやその気配で目覚めるのだが、休日はもっぱら4度寝の末が夕暮れ時で、5度寝で1日が終了する。 一人暮らしを始めてからは、誰も「そろそろ起きなよ」なんて言ってくれ…

コトバの壁をよじ登る

静かにフィルムの上映が終わり、会場の後方にうっすら灯りが点る。 天井の低い会議室のような空間に、わたしを含めた数十人ほどの観客が等間隔に座っている。各々が眼を擦り、伸びをし、体勢を立て直す。或いは連れ合いとぽつりぽつり言葉をこぼしている。そ…